2026.08.26
- バイオテクノロジー
当社の製品の一つに、振とう培養機(バイオシェーカー)と呼ばれる装置があります。振とう培養機は、「振とう(シェイク)」して「培養」するための機械です。では、いったい何を培養するのか?それは「微生物」です。「微生物ってなに?バイキン?」と思われる方もいるかと思います。微生物とは、「微」+「生物」です。つまり、とても小さな(微細な)生物を指します。


微生物の「微」
微生物とは、微細な生き物の総称です。より詳しくは、「肉眼で見えないほど非常に小さな生き物の総称」となります。一般に、肉眼観察の限界は0.1mm(100μm)程度、おおよそ毛髪の太さ程度の大きさとされています(老いてくるともっと大きくなるかもしれません)。身近な微生物であるパン酵母(俗称イースト菌、学名はサッカロマイセス セレビジエ)は、全長10〜20μm程度ですので、毛髪のさらに10分の1ほどの大きさになります。
微生物の「生物」
次に、生物とはなんでしょうか?私達人間も生物ですが、実は、意外と生物について多くを知らないものです。生物は次の4つの特徴を持ちます。
特徴1:細胞で構成されている。
特徴2:細胞内で様々な物質を合成したり、分解したりする(代謝機能を有する)。
特徴3:細胞内の環境を一定に保つ機能がある(恒常性の維持)。
特徴4:自身と同じ遺伝子を持つ細胞や個体を作る機能がある(自己複製)。
17世紀、英国の博物学者ロバート・フックはコルクを顕微鏡観察し、小さな部屋の様な構造を見つけました。彼はこれをcell(細胞)と名付け、生物は細胞で出来ていると考えました。今日では、生物の始まりは膜で閉じられた構造体が出来たことと考えられています。膜によって、内は外(外界)と区別され、物質が濃縮され、膜を通した物質の出入りが行われます。生命の誕生以来、次第に膜内でより複雑な反応が行われるようになり、さまざまな形態の生物へと発展したとされていますが、その詳細は未だ未解明です。
細胞内にはさまざまなタンパク質があり、代謝機能を有するタンパク質は「酵素」と呼ばれます。酵素が充分に機能するためには、細胞内の環境条件(温度、pH、塩濃度等)が一定の範囲に保たれる必要があります。そして自己複製。自己複製は、生物において最も重要で、他に類を見ない特徴です。自身の設計図(遺伝情報)は、核酸という物質に記録してあります。生物は、この遺伝情報に従って自身と同じものを作ることができます。生物は、時間とともに劣化し、壊れていきます。そのため、定期的に自己複製をすることで、遺伝情報の永久保存を目指しているようです。
微生物っぽいもの
このように、毛髪の太さよりも小さく、生物の特徴である1~4を持っているものが微生物です。しかし、何にもまがい物は付きものです。実は、「微生物っぽい」ものもいます。確かに小さいのですが、生物の4条件のうち、いくつかが欠けています。その代表はウイルスです。細胞のような構造を持っていて、中には遺伝情報である核酸もあります。しかし、代謝機能を担う酵素は数種類(甚だ不十分)しか持っていません。単に、遺伝情報を詰めたカプセルのようなものです。ウイルスが自己複製するときは、他の生物の細胞を乗っ取ります(セルジャック?)。もちろん、ウイルスは恒常性を維持する素振りもありません。場合によっては、自己複製が終了したあとに、セルジャックした細胞を壊してしまうという、悪逆非道な振る舞いを見せることもあります。「ウイルスは生物か否か?」という問いは、研究者によって見解が分かれます。人によっては「半生物」と呼ぶこともあります。生命あるいは生物について、何かを定義するのは非常に難しいことです。
次回は「どのような微生物がいるのか?」について紹介します。実は、私達は微生物にまみれて生きています。むしろ、微生物にまみれないと、健康な生活はできないのです。
茂野 俊也 / 加藤 隼人