オリゴ糖や食物繊維などのプレバイオティクスは、人の健康増進に役立つため、様々な食事に広く利用されています。プロバイオティクスが生きた微生物(有用菌)を指すのに対して、プレバイオティクスは、難消化性で大腸まで到達し、腸の中の有用菌の栄養源となる食品を指します。プレバイオティクスを摂取することにより、腸内の善玉菌が増え、腸内フローラを良好なバランスに維持する効果があるとされています。また、結果として有用菌が増殖することにより、ミネラルの吸収促進、炎症性腸疾患や腸がんの予防、アレルギーの抑制等の効果があるともいわれています。最近では、プレバイオティクスとプロバイオティクスをバランスよく摂取するシンバイオティクスも注目を集めています。
オリゴ糖を摂取することにより、体内のビフィズス菌が増加することが知られています。オリゴ糖には、乳果オリゴ糖(ラクトスクロース)、ガラクトオリゴ糖(GOS)、フラクトオリゴ糖(FOS)、マンナンオリゴ糖(MOS)等があり、機能性食品やペットフードの有効成分として幅広く利用されています。古くは1899年に、パスツール研究所のTissier博士が、母乳栄養児の便からビフィズス菌を発見した事から、腸内細菌の研究が進みました。母乳中において、ビフィズス菌の増殖因子がオリゴ糖であることが分かり、その後、オリゴ糖の研究が急速に進展しました。現在、オリゴ糖の需要は拡大を続けており、市場規模は毎年6.3%のペースで成長し、2029年までには25億米ドルに達するという予測もあります。
オリゴ糖は、主に乾燥粉末か液体シロップとして販売されています。乾燥粉末は、液体と比べて質量と体積が減少するため、輸送コストをおさえることができます。また、乾燥品であることから、長期間保管することが可能です。オリゴ糖乾燥粉末の製造工程では、スプレードライヤーが使用されています。スプレードライヤーによって工業的に生産されたオリゴ糖乾燥粉末は、乳児用粉ミルクやベーカリー等の加工食品、乳製品や飲料に加える中間原料、医薬品原料等で利用されています。
ヒトミルクオリゴ糖(HMO)も注目を集めています。HMOは、母乳に含まれる天然成分で、乳児における免疫系の発達や認知力の向上に役立つとされています。また、感染症やアレルギーのリスク軽減においても有用性が示されています。HMOは、プレバイオティクスの面においても重要です。ビフィズス菌などの腸内細菌に、選択的に栄養を与えて善玉菌の増殖を促進するため、ヘルスケア全般において、健康をサポートするHMOへの関心が高まっています。HMOは、粉ミルクの主要原料である牛乳や他の哺乳類の乳にはほとんど含まれない成分です。天然からの抽出が難しいため、安定した製造プロセスが模索されていましたが、近年では酵素反応を用いた工業製法等が確立されつつあります。今後は、母乳の組成に近い粉ミルクなど、HMOを有効的に組み入れた製品が増えていくと予想されます。
オリゴ糖の噴霧乾燥では、適切に設計されたスプレードライヤーが必要になります。例えば、果糖を含む単糖類や少糖類など、分子量が低い原料を混合する場合は、乾燥粉体の付着性と吸湿性が高くなることがあります。スプレードライヤーのプロセス設計が適切に行われていない場合は、乾燥製品がプロセス内に付着することに起因する製品回収率の低下や、粉体の凝集、あるいはプロセスの排気に含まれる水分の再吸湿等の問題が発生する場合があります。高い効率で安定した生産を行うためには、原料、プロセス、運転条件、さらには最終的な粉体製品の品質を考慮して、適切なプロセス設計を行うことが重要です。
オリゴ糖の噴霧乾燥は、一般に乾燥温度を低く設定して穏やかに乾燥させます。低温の運転条件の場合は、液体が緩やかに乾燥するため、かさ密度が高くなる傾向があります。一方、高温条件においては、液滴が短時間で乾燥するため、粒子の外殻形成が早まります。そのため、内部蒸発による粒子の膨張や破裂、中空化が生じることがあります。含水率については、低温条件が高く、高温条件が低くなります。液体噴霧方式は、ロータリーアトマイザー、二流体ノズル、一流体加圧ノズル、超音波ノズルから選定します。噴霧方式を選択する際は、噴霧液滴径だけではなく、物理的な接触および摩擦による影響も考慮にいれます。
粉体製品の品質管理は、粒度分布、かさ密度、含水率が主要なパラメータとなります。これらに加えて、流動性や湿潤性、溶解性、色合い、味覚にかかわる粒子表面特性等を含める場合もあります。粒度については、大きい粒子は流動性が良く、容器に充填されやすいため、かさ密度は高くなります。小さい粒子はその逆となり、かさ密度は低くなります。かさ密度の数値が不安定な場合は、製品充填時の安定性が低下します。含水率は、大きい粒子は比表面積が小さいことから、乾燥時に水分の抜けが悪くなることで、水分値が高くなる傾向にあります。小さい粒子は、比表面積が大きいため水分が抜けやすく、水分値が低くなります。一方、吸湿性の高い粉体は、排気に含まれる水分を再吸湿することによって、小さい粒子が高水分値に、大きい粒子が低水分値になることもあります。
原料については、濃度や添加剤の有無、またその添加量が主要な指標となります。原液濃度を高くすると、単位時間当たりの蒸発水分量を下げることができるため、生産効率が上がります。一方、原液濃度は、製品の粒度や密度に影響するため、適切な値を決定する必要があります。低分子の糖を含む原料の場合は、付着性が高くなることから、添加剤とその投入量を最適化することが重要です。乾燥製品がプロセス内で付着あるいは堆積した状態が続くと、粉体が長く高温にさらされるため、熱影響によって変色する場合があります。また、品質グレードとして、湿潤性や溶解性を高める必要がある場合は、ポリアクリル酸ナトリウム等の高吸水性高分子(SAP)やシリカ等の添加剤を使用する場合もあります。
当社のスプレードライヤーは、オリゴ糖の噴霧乾燥工程における多数の実績があります。積み重ねた経験と実績から、要求品質を満たした最適なプロセス設計および運転条件設定を行います。スプレードライヤープロセスの諸条件を最適化し、粉体品質をコントロールする事が可能です。また、当社が開発したフリーズグラニュレーターは、スプレードライ製品およびフリーズドライ品の粉砕製品の弱点を解決することが可能なプロセスです。凍結造粒技術については、フリーズグラニュレーション(凍結造粒)とは、食品・医薬品における凍結造粒技術の優位性、生菌率を高く保持する – 菌体のスプレードライ(噴霧乾燥)とフリーズグラニュレーション(凍結造粒)等で紹介しています。
当社は、スプレードライヤー、スプレークーラー、フリーズグラニュレーターの粉体製造だけではなく、前後工程を含めたテスト・分析・測定サービスを提供しています。国内二拠点のパウダーテクニカルセンターおよびASEANパウダーテクニカルセンターの計三拠点において、顧客の課題を解決するために日々運営しています。2023年に新設した第二パウダーテクニカルセンター(PTC2)では、国内最大規模の分析・測定装置を取り揃えています。粉体加工だけではなく、原料調製から分析・評価までワンストップで対応する事が可能です(粉体テスト・分析・測定サービス詳細/粉体委託加工サービス詳細)。
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