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コラム#22 「ウイルスって何者?」

2020.08.05更新

ウイルスって何者?

世界的な大流行になってしまった“新型コロナウイルス”。誰しもわからないものは怖いもの。ならば、怖がっているばかりではなく、少しでも理解しましょう。 今回はウイルスについての再確認です。


〇おさらい

このコーナーの第一回で生物とは何か?について解説しました。 (参照先:「コラム#1 微生物って何者?」)

おさらいです。生物は次の4つの特徴を持ちます。

特徴① 細胞で構成されている。
特徴② 細胞内で様々な物質を合成したり、分解したりする(代謝機能を有する)。
特徴③ 細胞内の環境を一定に保つ機能がある(恒常性の維持)。
特徴④ 自身と同じ遺伝子を持つ細胞や個体を作る機能がある(自己複製)。

そしてウイルスはこの4条件のいくつかが欠けた存在、“不完全生物”です。

〇最大の特徴

ウイルスも細胞の様な殻構造を持っていて、中には遺伝子である核酸が入っています。
しかし、代謝機能を担う酵素はほとんど無く、遺伝子を詰めたカプセルといっても良いでしょう。
そしてウイルスの最大の特徴は、小さいこと。細菌の10分の1以下、電子顕微鏡を使わないと見えません。

〇リボ核酸とデオキシリボ核酸

核酸にはリボ核酸(RNA)とデオキシリボ核酸(DNA)の2種類があり、人や細菌等の“完全生物”はDNAを遺伝子としています。
RNAは化学的に壊れやすく、より安全な遺伝情報の記録体としてDNAが選ばれたと考えられています。
ウイルスの場合は、遺伝子としてRNAを持つものとDNAを持つものがあります。コロナウイルスはRNAを遺伝子にしているRNAウイルスです。

他にもインフルエンザウイルス、おたふく風邪ウイルス、エイズウイルス、ノロウイルス等、有名な病気の原因もRNAウイルスです。
DNAウイルスにはB型肝炎ウイルスやヘルペスウイルス等があります。

また細菌に感染するウイルスはファージと呼ばれ、遺伝子工学の分野では、外来遺伝子を細胞内に導入する道具として使われるものもあります。

〇対策

“不完全生物”であるウイルスは、自身のみでは自己複製できません。
このため感染先の宿主の細胞を乗っ取り、そこにある原料と機能を好き放題に使って自身のコピーを作り、増殖します。
場合によっては自己複製終了後にジャックした細胞を壊して、出て行ってしまいます。

ジャックされた細胞でウイルスの複製を作っているのは、あくまでも宿主細胞のシステムです。
このためウイルスの増殖を阻止することは困難です。増殖を阻止するには宿主細胞のシステムを止める手段が必要です。
しかしそれは健康な細胞までも攻撃する諸刃の剣です。何しろ同じシステムなのですから。ジャックされた細胞のみをターゲットとする治療法の開発は難しいと考えられます。

もちろん、“完全生物”である細菌やカビに対する薬剤(抗菌剤や抗生物質)はウイルスには効きません。
そうなるとウイルスが宿主細胞に入らないようにするのが得策です。

〇新型コロナウイルス

新型コロナウイルスはヒト細胞表面にある特定のタンパク質を目標として細胞内に入るようです。
この辺が治療薬に応用されるのかもしれません。またジャックされた細胞から増殖したウイルスが出ていくのを邪魔する対処法もあり、これは抗インフルエンザ薬に応用されています。
世界中で対新型コロナウイルスの研究が行われています。しかし、治療薬には治療効果と共に安全性も求められます。
安全性の確認には時間を要します。安心して使える治療薬の登場には、時間がかかりそうです。

今のところ、なんといってもウイルスに接触しない、体内に入れないことが肝要です。
今や世界中、どこで新型コロナウイルスに接触しているかわかりません。
現実的には、手洗い、うがい等、“洗い流す”という水際の物理的防御に徹するのが最善策でしょう。

技術顧問 博士(農学)

茂野 俊也(Toshiya Shigeno